いつもお世話になっている翔ちゃんこと、野山翔さんとの初コラボ作品です♪
挙式前&年末年始で忙しいのに「アスランとキラの友情物でvv」と言う私のリクエストに
見事に応えて頂きました(*^^*) 。翔ちゃん、ホントにどうもありがとうね〜〜vv
本編の雰囲気を保ちつつそれぞれのキャラを動かすのが得意な翔ちゃんの作風。
今回もステキなほのぼの雰囲気で仕上げて下さいました♪
皆さんゼヒ楽しんで行って下さいませね〜〜〜(^^)/。・:*:☆・゜',。・:*:・゜'★


翔ちゃんのステキサイトは下のバナーから♪






『サンタさんからプレゼントもらったんだ!』

そう言ってニコニコとおもちゃを見せたキラを、きっと俺は不思議そうな顔をして見ていた事だろう。







<<Happy Merry Christmas>>







街が煌びやかに彩られる。どんな店舗に足を踏み入れても耳に届くのはクリスマスをイメージした音楽。そうして目に映るのは当然のように特設されるプレゼントコーナーや宣伝文句。

…どうしてこんな中に暮らしていて”サンタクロース”などというものを信じられるんだろうな…。

その街中を歩きながらアスランはそんな事を考えていた。


プラントには所謂「信仰」というものはないから、形だけ伝わっているクリスマスというものは親からプレゼントを貰う日だと、それが普通なのだと思っていた。
それが覆されたのは月に移り住んだ最初の冬。”サンタクロースから貰ったプレゼント”というのをとても嬉しそうにキラから見せられたのが最初だった。サンタクロースって…なんだろう…そう思ってじっとキラの手に載せられたおもちゃを眺めていたら『アスランは何を貰ったの?』と無邪気に問い掛けられて。その時貰った物といえば母から贈られた物しかなくて、それを”サンタからのプレゼント”と言い逃れたような気がする。

それが地球の慣わしだと知ったのは家で聞いたからだ。
何故、地球の親は自分達からのプレゼントをわざわざ架空の人物からなどと偽って渡したりするんだろうと、その話を聞いた時には思ったものだけれど。それでも、クリスマスの日には『サンタさんに貰った』と楽しそうにはしゃぐ友達を、ちょっぴり羨ましく眺めていた事は記憶に残っている。



−それにしたところで。

「この情景を見て、どうして何も思わないんだろうか…地球の子供は…」
また同じ結論に辿り着いたら思わずそれが口をついてしまった。
「…思わないって…何が?」
それを並んで歩いていたキラが聞きとめて問い掛けてくる。彼は両手で大きな買い物袋を抱え、アスランは両手に袋をぶら下げ。勿論持っているのはそんな純粋な子供達への”サンタからのプレゼント”である。
「…いや…別に」
キラだって信じていた子供の一人である−今は流石に思ってはいないだろうけど−。そんなキラなら何か明確な答えをくれそうな気もするけれど、それを聞いてしまうのも悪いように感じたアスランはそれ以上は追求はせず、言われたキラも取り立てて催促はせず、今日のパーティが成功したらいいね、と晴天の空を見やって呟いた。
地球の気候は成り行き任せだから、プラントのように綺麗なホワイトクリスマス、なんて事はめったにないらしい。星空のクリスマスだって十分綺麗だと、数年地球上でこの時期を過ごしていたアスランは思うのだが、この辺りも矢張り地球人とは感覚が異なるようだ。そうだな、と答えて少し夕焼け色に染まりだした空の下、子供達が待つ孤児院へと二人は足を速めた。







「−じゃあ、俺はこれで。今年もお誘いいただいて、有難うございました」
ケーキだチキンだと一通りのパーティ食を終え、皆で歌を歌ってゲームをして。大はしゃぎをした子供達は次々と夢の世界の住人になっていった。それを順に部屋まで連れて行き、全員がすっかり眠った頃に、キラとアスランは昼間買い出して来ていたプレゼントを一人分ずつ枕元に置いて、そのまま部屋を後にする。そうなれば後は特にすることもない訳で、泊まっていけばというキラ達の誘いを断って、アスランは自分の部屋へと帰る事にした。部屋に一人居るよりはよいと誘われれば断る事はしないが、それでもこの”サンタクロースの贈り物”のイベントにはどうにも馴染めないのだから、仕方がない。
昨年は翌朝に大喜びをする子供達を見ながら、表で良かったね、という顔をして、心の中では矢張りどこか釈然としないモノを抱いていた。それならばいっそ、大人しく一人過ごした方が、双方にとって都合がいいに違いない。そう思ったから。

とは言え、大きな子達が眠る時間まで待っていたのだから時間はいい加減深夜である。帰ったところで何をするでもなく、シャワーを浴びて眠るだけだ。

…まぁ…そんなもんだよな、実際は。

窓の外に広がる満天の星空を見上げてそう心でごちると、空調を適度にセットして、アスランはベッドに潜り込む。数分後には空調機からの送風音と微かな寝息が室内に残っていた。







翌朝−。





…これって有り得ないだろう………?

休日で早起きする必要はなかったから、いつもより少し遅い起床をしたアスランは暫くぼうっとした頭を抱えながら、目の前の状況をとらえ、そうして数秒の後に脳が急速回転を始める。
枕元に置かれた箱。見た目は赤くて、緑色のリボンが掛けられている。

…泥棒…っていうのは普通モノは置いていったりしない…よな……。

泥棒に入られたとしてもその事には微塵も警戒心がないところはどこかずれているのだが、それは今はさておき。頭の中で考える。そしてぱっとベッドから飛び起きると窓という窓、そして扉の施錠を確認に走る。セキュリティはしっかりしている部屋だから、まさかとは思うけれど昨日は疲れていたから施錠を忘れて眠ってしまったかもしれない。そう思って走り回ってみたものの…やはり鍵はかかったままで。

…まさか本当にこんな密室に入り込める人間が居るわけ……ない…だろう…。

子供の頃からそんなものはいないと教えられてきて、勿論そんなものに出会ったこともなくて。それが今この年齢になって現実になったとして誰が信じられるというものか。
どうしても否定したい心とならば何故今ここにこんなものがあるのかというそれを更に否定させる現実に挟まれてアスランは混乱したままとその包みを見るしか出来なかった。




「…どうかしたの?アスラン。ぼうっとして」
「…え?あ、いや、なんでも…」
結局その事態を解決するべく翌日、アスランははしゃぐ子供を何の気なく眺めていた。キラに突然呼びかけられて現実に引き戻される。
「…キラ」
「うん?」
今朝の出来事を聞いてみようかと呼びかけてみたものの。
「あ、いや…やっぱりいい」
自分がこんな事を人に聞くのはどこか気恥ずかしい。無邪気に疑問系の顔をしているキラを見て、断ることしか出来なかった。
しかし。
「何?……もしかして、その今日持ってたバッグが何か?」
「え?」
何となくそのまま家に置いておくのも気分的に嫌なものがあって、”子供たちの反応見においでよ”というキラの誘いに答えたついでに持って来てしまった、例の包み。なるべく気付かれないように、と持っていたつもりで居たのだが…というには大きいのだけれど…しっかり目に留められていた。
「…そういうわけでも…ってっキラ!!」
反応に詰まったその瞬間を見逃さず、キラがアスランの足元からそのバックを拾い上げ、覗き込む。
「どうしたのこれ。…あれ?もしかして誰かに渡すの忘れてた−」
「そんな事ある訳ないだろうっ!これは今朝俺の…っ」
言ってしまってはっと気付く。普段は言葉足らずで誤解も招いていそうな自分は、どういうわけかこういう時に失言が多いのだ。そうして聞いていたのはそんなところを聞き逃してくれるはずのないキラ。
「『今朝俺の…』なんなの?」
もう誤魔化されてはくれなさそうな微笑みを浮かべて続きを促してくる。一旦適当にかわそうとはしてみたけれど、所詮そういったことは出来ない性格。どうなの?と追求されたら、ぐ…とつまりつつもうはぐらかす事も出来ず、家に帰ってから朝これに気付くまでのあらましを話すしか、アスランには道はなかった。


「…ふぅん…」
ひとしきり話を聞いたキラは最初にそうただ呟いた。そうしてやたら自信ありげに続けてくる。
「それはきっと−」
「……きっと?」
その反応からして、自分が寝ぼけて誰かに買ったものを置いてたんじゃないか、とかさっきも言ったみたいに昨日誰かに渡すのを忘れたんじゃないかとか、そう言った答えが帰って来るだろうと半分わかって、半分そう言ってくれと祈りながらその包みを膝に乗せたアスランは思っていたのだが。
「サンタクロースがくれたプレゼントだよ。うん」
「………」
至って大真面目に告げられたその結論に、開いた口を塞げなくなる。そういう突拍子な答えを、今ここに求めていた訳ではないのだ。…と言ってもわかっていて相談してしまったのは他ならないアスラン自身ではあるが。
そして、当然そういうアスランの反応は想定済みのキラがじゃあさ、と付け加えてくる。
「誰が夜中に、しかもアスランの気付かない間に、施錠されたアスランの部屋に入るって言うのさ?」
「…それがわからないからこうやって…」
「”どうやって”鍵のかかった、しかもセキュリティのしっかりした部屋に入るって?」
「…だからそれがわかれば苦労は……」
ちろんとした目でこちらを見てくるキラに思わずしどろもどろになりながらアスランは食い下がり、すればキラはあっさり言ってくる。
「開けてみれば?」
「−は?」
開けてみる?この正体不明の包みを…誰が?一瞬にして考えがすっとんだアスランに更にキラは
「開けてみてさ、それが何かでアスランの悩みが晴れるかもしれないじゃん」
などと呑気なもので。

…どうか、誰かにあげわすれた物でありますように…。

非現実的な事は信じてないはずなのに何故かそんな事を祈りながら、アスランはそうっとリボンをほどき、包みを解いて…出てきた雪の模様のプリントされた箱。蓋に手をやって一旦深呼吸をする。大丈夫だ、大丈夫だと心の中で念じながらそうっと蓋を開けて…。

…っ!?

即座にぱたんと蓋を戻す。隣でキラはその所作を大人しく眺めている。

…いや…これ…は……。

あり得ない。絶対にあり得ない。自分の知らない間に密室であった自室に入り込み−前から探していた物を置いていくなんて事。大体、これを探してるんだなんて、一度も人に話した事はない。
「どう?何が入ってたの?」
提案者キラは勿論そんなの知ったこともなく聞いてくる。
「いや…言うほどの…ものじゃ…」
「って事は、アスラン向けの物だったんだ」
思い切り自爆してアスランは返す言葉がない。それを確認してからキラはやっぱりサンタクロースのプレゼントでしょ、と得意げだ。
「だが…そんな事あるわけが……大体、子供達へのプレゼントだって大人が内緒で与えてるもので−」
「でもね?地球にいたらそんな信じられない事って稀にあるんだよ。現実では考えられない、常識とかそういったものを飛び越えちゃった物−」
やはり何処までも食い下がるアスランに軽く溜息をつきながらキラは腰を上げる。そうしてドアの方へと足を向けながら振り向くと一言
「地球ではそれを”奇跡”って言うんだ」
そういい残して部屋を出て行った。



…奇跡…って……。

そんな括りにするには余りにも規模が小さいような気がアスランにはするのだが。

−それでも。

こっそりともう一度蓋を開けて中を覗いて見る。なかなか見つからなくて半ば諦めていたもの。何処の、誰が自分の為にこんな事をしてくれたのか、はたまた本当にキラの言うように奇跡なるものだったりするのか。

…欲しかった物を突然誰かから貰うって言うのは、そう思えば嬉しいものかもしれないな…。

目の前ではしゃぎ回る子供達を見て、ふとそんな事を思う。

…まぁ、かといって、そんな事を素直に信じて喜ぶ年でもないが……。

ふとさっきまでいぶかしんでいた事を思い出し、そうして思わず苦笑する。
それでも欲しかったものが手に入ったという喜びは本人が自覚している以上に壮大らしく、キラが何時まで経っても帰ってこないのを疑問にも思わず、箱を覗いて見ては閉じ、閉じては開き…といつもではあり得ないほど子供じみたアスランがそこにいた。





そしてそれをドアの隙間から覗き込む人物が二人。

「嬉しそうですわね、アスラン…」
「そうだね…まさかこんなに簡単にあんな無茶苦茶な理屈を納得するとは思ってなかったんだけど」
「ですが、これでキラの苦労も報われますわ」
「まぁ…あんなに入手困難な物だとは思わなかったし、ばれないように子供経由で調べたからアスランも覚えてなかったんだね、流石に。…でもさ」
「はい?」
「子供の頃、サンタクロースからもらうプレゼントって、凄く嬉しかったんだけどさ。今こうやって見てると、”サンタクロースからだね”って言いながら子供の喜ぶ顔を見る親っていうのも、やっぱり嬉しかったろうね。なんか今日わかった気がする」
「相手がアスランだというのがなんだか不思議な感じですけれどね」
「…でもやっぱりアスランの能力って侮れないよね。人の侵入にはすこぶる疎いけど、このラクスのハロ、あのアスランの部屋のセキュリティ全部外しちゃったもんね」
「…ですが、それも外れるだろうとキラは信じていたんでしょう?」
「ま、そうなんだけど。…じゃあラクス。今日はアスランが帰ったら作戦成功のお祝いでも、やろっか」
「まぁ、それはいいですわね。二人でこっそりと一日遅れのクリスマスパーティをしましょう」






真面目で不器用で、現実的な彼の元にひと時の幸せを。

そして地上に生きる全ての者に、ささやかでも暖かい時間が訪れますように−。




-Merry Christmas